貝殻は結晶構造や間基質が複雑に関係しあって形成されるため、殻質は系統によって大きく異なることもある。非常に硬くて丈夫な殻もあれば、間基質で囲まれた稜柱層(角柱層)のみからなり、薄質で柔軟なものもある。
酸などで貝殻の炭酸カルシウムを脱灰すると、殻皮と間基質のみが溶解せずに残るが、基質の割合が高い殻では貝殻の原形がほぼそのまま残ることがあり、逆にアルカリを用いた場合には、基質が溶けて殻が部分的にばらばらになってしまうこともある。
殻皮は殻の外側を覆うキチン質の薄膜で、主として結晶形成の際の支持と環境水中への溶解防止の役割をもつ。特に殻の縁辺部での拡大成長における殻皮の機能は重要で、殻皮の縁が内側に折れ込み、これと外套膜の縁辺部がかみ合って環境水から隔離された微細な小室を形成し、イオン環境がコントロールされたこの中で、結晶成長が起こる。
しかし中にはそれに止まらず、殻皮が様々に変化して毛状や襞状になって殻本体の概観を変化させているものもある。このような種類では、殻皮のあるものと殻皮を除去したものとの外見が大きく異なることがあり、たとえばカコボラは多肉質な質感の毛むくじゃらな殻をもつが、殻皮を除くと太い畝のある殻が現れ、イモガイ科では厚い殻皮を除くと鮮やかな色彩が現れるものがある。またタニシやカワニナなど淡水の貝類には殻本体が白色や淡色のものも多いが、丈夫な殻皮とその表面に付着した酸化物とで真っ黒に見える。
また殻皮は時間ととも剥離したり脱落することも多く、殻皮が失われた貝殻は(特に環境水中にカルシウムイオンの乏しい淡水の貝類で著しい現象だが)表面から溶解侵食するが、通常は内側の外套膜から常に新たな炭酸カルシウム層が付加されるため、軟体部の内臓嚢が露出したり、殻自体が消えてなくなることはない。